The Courage to Remember: (記憶する勇気)
PTSD - From Trauma to Triumph
(トラウマから勝利へ)
 
レスター・テニー

書評:徳留絹枝
 

「悠々自適の引退生活を送っている94歳の私が、なぜこの期に及んで本を書くなどという大変な仕事に取り組みたいと思ったのか?」 第二次大戦中、日本軍の捕虜として「バターン死の行進」とその後3年以上に渡る虐待、拷問、奴隷労働に生き残ったレスター・テニー博士は問いかけます。

14年前、カリフォルニア北部連邦地裁のヴォーン・ウォーカー判事は、元日本軍捕虜の対日本企業強制労働訴訟を却下するにあたり、以下のように宣言しました。

原告が求めた元捕虜や他の被害者に対する補償は、純粋な経済的意味においては否定された訳であるが、彼らとその子孫が自由でより平和な世界を生きることができるという計り知れない賜物こそが、その債務を果たすものである。

それを聞いたテニー博士は、判事がまるで 「あなた方は生きているんでしょう?それで充分じゃないですか。」 と言っているように感じたそうです。しかしテニー博士にとって、「ただ生きていること」 は決して充分ではありませんでした。彼は、彼と仲間の捕虜が奪われた正義と名誉を取り戻さなければならなかったのです。ですから、彼はそれを求める長く困難な闘いを始めました。そして概ね成功しました。彼の不屈の努力の結果、日本政府は2010年、第二次大戦中の米捕虜への非人道的扱いに関して正式に謝罪し、元捕虜を日本に招聘する和解プログラムを開始しました。(テニー博士は、捕虜に強制労働を課した日本企業からの謝罪を、今も待ち続けています。)

それでもテニー博士は、ただ生きているだけではやはり満足しませんでした。それで彼は、彼自身が長い間苛まれたような PTSD を患っている人々を助けようと、この美しい本を書いたのです。彼は、心の痛み・怒り、そして生き残ったことへの罪悪感を乗り越えた彼自身の闘いを、語りました。彼は、赦すこと、特に自分自身を赦すことがどれほど大変だったかを、告白しました。しかし、最終的に彼は宣言します。

私はやっと気付いたのです。赦しは、私がそれを受けるべきだと決めた人に、私が与えるものではないのだと。いえ、それは私が受けるべきもの、私が自分に与える贈り物だったのです。心の平安という贈り物です。赦しを通して、私は被害者から生還者になりました。赦しゆえに私は囚われの身から解放されたのです。

彼はまた、PTSDを乗り越える闘いでターニングポイントになった真の愛と友情についても、感動的に書いています。

                             
        最愛の妻べティ         田坂徹・澄子夫妻との友情
               

テニー博士の限りなく前向きな姿勢は、この本のいたるところに現れています。例えば、彼は敗訴した訴訟について以下のように書きました。

べティと私がこの何年も言ってきたことは、「訴訟では1ペニーも得ることはできなかったけど、その代わり、百万ドルにも匹敵する友情を得たね。」 ということでした。会うはずも無かった多くの人に会えたし、行くはずもなかった場所も訪ねました。それは全て訴訟のおかげ、それもその訴訟に負けたから起こったことだったのです。

この本は、テニー博士が私たちに贈る愛と友情の贈り物です。そしてそれは私たち全員への挑戦でもあります。

私の物語りの終わりは、あなたの或いはあなたの愛する人の物語りの始まりです。
「あなたが苦しんだことは知っているよ。僕もそうだった。」
そしてこれは、あなたにふさわしい人生を取り戻すことは、あなたにしかできない仕事なのですよ、という私からの挑戦でもあるのです。

この本には、サンフランシスコ大学の脳放射線科の教授でPTSDの権威である Alisa Gean 医学博士と、Darrell Issa 連邦下院議員が前書きを書いています。

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私はつい最近、カリフォルニア州カールスバッドのご自宅にテニー博士を訪ねました。彼はこの新書にサインしてくれましたが、それは1999年春に初めて彼を訪問した時の思い出を甦らせました。その時も、彼は捕虜体験を綴った回想録 My Hitch in Hell にサインしてくれたのです。それからの15年間は、数え切れない思い出と友情が詰まった素晴らしい年月でした。
 

   

     


 

レスター、さらなる目的の達成おめでとう!そして愛と友情の贈り物を有難う!

                                                                                             (Posted on October 7, 2014)